REPORT
2021.03.21

重度障がい者×視線入力+ニンテンドースイッチat.Myself

Myselfです。

Myselfには様々な障がいのある方々が通っておられます。
一口に障がいと言っても、個性と同様、人それぞれ。
出来ること、出来ないことは大きく違っています。

私たちは彼らのことをスタッフと呼んでいますが、
スタッフの皆さんが重い障がいがあっても
仕事やレクリエーション、運動、文化芸術活動といった
様々な活動の中で、活躍し、笑顔で楽しめるよう、
1人1人に合わせて、環境を整えたり、道具を用意したりするなどして
いろいろと工夫をして取り組んでいます。

それはビデオゲームについても同様。
私たちがコントローラーを握って遊ぶビデオゲームでも
そのままでは遊べない方が多いのです。

彼ら、彼女らスタッフの皆がゲームを楽しむにはどうしたらいいか。
ゲームを遊ぶためには画面の中のキャラクターなどを
コントローラーで操作する必要がありますが、
スタッフの中にはコントローラーを握ることが難しい方も多いです。
そんな、コントローラーを握って遊ぶことが難しいスタッフのために
これまでもインターフェイスを様々に検討し、用意してきました。

普通に量販店で販売しているアーケードスティック。
テーブルに置いて使用し、ボタンも大きいので
コントロールパッドを握ってプレイする方が難しい方でも操作できるのではないか。

また、パソコンで使用するマウスをコントローラーとして使用すれば
両手でコントロールパッドを握るのが難しい方でも
片手で操作することが出来るのではないか。



参考記事:eスポーツ活動at.Myself

市販のインターフェイスをそのまま使用するだけでは
まだまだ難しい一面もありました。
そんな時、フレックスコントローラーという
障がいのある方に向けて製作されたインターフェイスがあるという情報を得て、
さっそく導入してみました。

大きなボタン機器のみでゲームを操作することが出来るようになったことで、
これまで導入した機器でもなかなかゲームを楽しむまで出来なかった方も
参加できるようになりました。



参考記事:重度障がい者×ニンテンドースイッチ

ある方が、今まで家で兄弟がゲームをしているのを後ろで見ているだけだったので、
自分で遊ぶことが出来て嬉しかったと話してくれたことが非常に印象に残っています。
最近では私の顔を見るたびに、
「ゲームをしたい!」と言ってくるようになりました。


しかし、この大きなボタン機器のみの簡単操作にしても、自力で遊べない方はいます。
四肢麻痺で、ボタン1つ押すことさえ困難な重度の障がいのある方。
このような方でも、ゲームを自分で楽しむことが出来るようにならないものか。

Myselfでは視線入力でマウス操作が出来る機器を導入しており、
パソコンやタブレット端末の操作が難しいスタッフが、
意思の伝達を行ったり、絵を描いたりすることに活用しています。

参考記事:PC、タブレット端末の視線入力機器を導入しました。

例えばこの視線入力機器を使ってゲームを楽しむことが
出来るようにならないものか。

常々そう考えていた時にそれが可能だと教えていただいたのが、
これまで何度かご紹介させていただいてきた
今津特別支援学校の福島先生が書いているブログ記事でした。

参考記事:Sam’s e-AT Lab

リンク先の記事を参考にして機器を導入、セッティングしました。



どの機器とどの端末とどのケーブルがどのように繋がって…ということを、
私が長々と説明するよりは、
上記のリンク先の福島先生の記事を見ていただいた方がわかりやすいかと思います。

私も労せずセッティングすることが出来ました。
福島先生の記事は本当にわかりやすくて参考になります。
いつもありがとうございます。
今回もそのまま活用させていただいております。

セッティングが完了した後は、まず私の方で視線入力で
ゲーム操作を行ってみました。

それぞれのボタンに該当するエリアをディスプレイに設定。
そのエリアに視線を向けるだけでゲームが進行し、キャラが反応する。
パソコンのマウス操作を視線入力で行った時もそうでしたが、とても感動でしたね。

ゲームはボタン機器でのプレイの時と同じく、
ニンテンドースイッチの「マリオカート8DX」を使用。

福島先生の参考動画では、ステアリング操作はオートにして、
アクセルのON/OFFとアイテム使用の2つの入力のみで
遊べるようにしてありました。

普段ゲームをしている身としてはステアリング操作も
自分で行う方が楽しいだろうと思い、左右のボタンも視線入力できるように設定。

そのうえでまず自分がテストプレイしてみたのですが…

これが非常に難しかった。

視線を動かすのみでのゲーム操作、これって簡単なようでとても難しい。
上手く視線が合わずに曲がれなかったり、入力が過敏すぎてすぐにスピンしたり。
これではおそらくゲームを楽しむどころではない。
普段からボタンをいくつも使ってゲームをしている自分の感覚ではなく、
初めてゲームをするスタッフがまず単純に楽しめることから
考えないといけないと気づきました。

改めて左右のボタンに対応したエリアを外し、
アクセル操作とアイテム操作の2つのみに設定しなおしました。



少しわかりにくいかもしれませんが、
ディスプレイ中央の青四角いエリアがアクセルボタンに対応しており、
右上の赤四角いエリアがアイテムのボタンに対応しています。

ステアリング操作はオートで設定したので勝手に曲がってくれます。

画面中央のキャラクターを見続けていれば走るようにしています。
視線が外れると止まってしまうので、少し視線がずれても止まってしまわないように
入力に対応するエリアを大きめに設定しました。

アイテムボタンはアイテムが表示される画面右上に設置したので、
アイテムを入手して表示されたときに目を向けたら使用できるようにしています。

この設定でもってスタッフに遊んでもらいました。
これまでは他の方が遊ぶのを見ているのみで
自分で参加することが出来なかった彼が、生まれて初めて自分でゲームを楽しみます。

果たして上手く出来るか、楽しんでもらえるだろうか。
環境を整えた私の方が不安と緊張が強かったような気がしますが…

その時の様子を動画で編集してみました。
よかったらご覧になってください。



実際に遊んでもらって、私の不安は杞憂であったことがすぐにわかりました。



楽しそうに、嬉しそうにゲームをしている彼の姿を見て、
とても楽しまれているなぁとほっとしました。

動画を見ていただければわかりますが、このレースで彼は1位をとっています。
難易度を一番易しくしており、職員も隣でサポートはしていましたが、
初めてゲームを遊んで1位をとれたということに、
彼自身も驚き、そして喜んでいました。

終わったあとで感想を伺ったところ、「楽しかった」と答えてくれました。
自分で操作してゲームをすることが嬉しかったとも話してくれました。

一方で、初めての経験で力が入りすぎてしまい、少し疲れてしまったとも、
素直に感想を伝えてくれました。

私自身でも試してみましたが、視線を送るだけの入力って、
簡単なようで意外と大変。
これをもう少し楽な形で楽しむためにはどうすればいいか。

入力エリアの設定場所をもう少し視線の動かしやすい場所に変えるべきか。
本人とディスプレイの位置や、本人の遊びやすい姿勢を考えられないか。

今回楽しんでいただいたので、これで良しとして完了とするのではなく、
私たちが寝転がってゲームを楽しむように
彼がリラックスしてゲームを楽しめる方法を今後も模索していかなければなりません。

他の方々にも視線入力で楽しんでもらいました。



視線入力だけで上手く出来たことに、思わずガッツポーズしていました。

私は普段、ゲームが好きでよく遊んでいます。
ゲームが好きなので、重度の障がいのある方でも同じように
ゲームを楽しんでもらいたいと思っています。

今回の視線入力機器や、前回のボタン機器を用いて
彼ら、彼女らがゲームを楽しむことが出来るようになり、
そして私も一緒に対戦したり、共闘したり出来るようになることが目標です。

今後も様々な機器を用い、環境を整えて皆が一緒に
ゲームを楽しめる取り組みを行っていきます。

新たな取り組みを行った時には報告していきますので、よろしくお願いします。
Myself
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